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骨盤矯正の効果と真実、問題点について【現役柔道整復師が解説】

骨盤矯正

最近の「骨盤矯正」ブームはかなりの賑わいを見せていますね!

雑誌やテレビなどでも、
「腰痛や首の痛み、肩こりは骨盤の歪みが原因!」
「冷え性や便秘も骨盤の歪みが原因!」
「身体の不調や自律神経の乱れ、内臓の病気も骨盤の歪みが原因!」

皆さんは何でもかんでも骨盤のせいだと思っていますか?

骨盤矯正に興味がある方、受けようか迷っている方、ちょっと待ってください!
骨盤矯正について誤った認識が定着していて、医師も警鐘を鳴らしています。

現役の柔道整復師である僕が、骨盤矯正の効果、疑問と真実、問題点などについて解説していきます!

目次

そもそも骨盤とは

骨盤

そもそも「骨盤」とは、「寛骨」「仙骨」「尾骨」の複数の骨によってつくられています。

寛骨(かんこつ)は、思春期までは腸骨、恥骨、坐骨の3つの骨に分かれており、軟骨で結合しています(軟骨結合)。成人になるとこの軟骨が骨になるため、それぞれの骨が癒合して一つの骨、寛骨(かんこつ)となります。

強度と安定性が求められるため、前は恥骨が軟骨で結合し、後ろは仙骨と寛骨が仙腸関節を作り、人体の中でも非常に分厚く強固な複数の靭帯によって、非常に強固に結合しています。

骨盤は内臓(膀胱や子宮、卵巣など)を入れて保護する役割と、身体を支える役割があります。骨盤を一つの大皿だと思ってもらえればわかりやすいかと思います。身体を支える際には、体重が仙骨部にかかり、それをアーチ状の左右の仙腸関節から恥骨結合部分へ大きくカーブを描いて伝わります。これが大腿骨(太ももの骨)から伝わる力を打ち消します。同時に体重は股関節に負担となってかかります。ですので、事実股関節の疾患は体重管理が大切となるわけです。

骨盤は歪むのか

人差し指を立てる男性

骨盤の構造と機能についてわかったところで、骨盤の歪みについて見ていきましょう!
骨盤は歪むのでしょうか?

結論から言うと、

骨盤は歪みません!



そもそも「歪み」とは広辞苑では“形がいびつな状態になること”を指します。よく考えてみてください。骨がいびつな形になったらどのような状態を想像しますか?鎖骨や肋骨は歪みますか?歪みませんよね?骨が歪んだらそれは「不全骨折」という「骨折」です。また、骨盤がずれているという表現もよく聞きますが、ごくわずかにずれが起きるとすれば仙腸関節が数mm動きますが、その際は強い痛みを伴います。

整体院で「骨盤が歪んでます!」「骨盤がずれています!」と言われて、整形外科にレントゲンを撮りに行く人もいるんです。

骨盤は非常に強固に結合されていて、それがずれるようなことは妊娠・出産などの生理現象以外はほとんどありませんし、ましてや他人が動かすことは困難です。骨盤の機能として内臓の保護や体重・衝撃を伝える機能があるわけですから、そう簡単に動くわけにはいかないのです。そもそも仙腸関節はそれを自力で動かすための筋肉が存在しませんからね!これをご覧になっているあなたも、「骨盤の関節動かして」と言われても動かせませんよね?

足首の捻挫をしたことはありますか?グキッとなって、足首を無理な可動域で動かすと靭帯や周りの組織を痛めるものです。そもそも靭帯は関節が無理な可動域で動かないようにするもので、伸び縮みはしません。そのため、捻挫で靭帯損傷を起こします。

では、骨盤の後ろで結合している仙腸関節はどうでしょうか?仙腸関節は骨盤矯正でよくアプローチされる関節ですが、強固な靭帯結合があるのに、無理に動かすのは無理やり捻挫させるのと同じです。

(※ただし、仙腸関節は完全に動かないというわけではなく、数ミリの可動性はあるため、それがある種の腰痛の原因となる可能性は完全には否定できません。)

骨盤矯正とは?

疑問に思う女性

骨盤は歪まないし、ずれもしないなら、骨盤矯正とは何なのでしょうか?

結論から言うと、骨盤矯正とは日常生活の偏った姿勢や筋肉の使い方による骨盤の「傾き」をなるべく正常な状態に近づけることを言います。

過去の僕の記事でも取り上げたのですが、人間はそもそも左右対称ではありません。内臓も、肝臓は右、心臓は左、肺も右の方が大きいです。もちろん筋肉や骨、脳でさえ左右対称ではありません。鏡を見て自分の顔を見てください。目は右の方が大きく、高さも左より高い位置にあります。細かく上げたらきりがないのでこの辺にしておきます。

ここでブレイクタイムを取りましょう!
皆さんは気になったことがありませんか?「なぜ陸上のトラックは左周りなのか?」

陸上のトラックは必ず左回りです。この理由は諸説あります(心臓が左だから説、地球の自転の影響説etc)が、これは多くの人の利き手利き足が“右”だからだと思います。コンパスのように軸足を左足にして左側に重心をかけ、遠心力に逆らうように右手右足でコントロールしながら走るのです。かつては陸上トラックが右周りだったことも一時期あったようですが、転倒者が続発したり、走りづらくてタイムが遅くなったりといった不満が出たようで、現在は左回りにほとんど統一されています。

僕が何を言いたいのかというと、「左右非対称が当たり前で、それが自然」ということです。左右の脚長を見比べて、それを同じにするということは果たして良いことなのか?ということです。左右非対称が自然なのですから、いくら施術をしようと左右非対称に必ず戻ります。

ですが、この項の冒頭でも書きましたが、骨盤自体の“傾き”が身体に悪影響を及ぼすことがあるのも事実です。これについて次の項で詳しく見ていきます。

骨盤の前傾・後傾

骨盤の前傾・後傾

上のイラストをご覧ください。骨盤の“傾き”が前傾、後傾しているのを表しています。

骨盤のこういった傾きは反り腰や猫背などの原因となり、関節同士の動きの連動性に軋轢を生みます。姿勢が悪いと関節を痛めやすい、お腹がポッコリ出ちゃう、便秘気味になる、というのは確かにその通りだと思います。

こういった骨盤の前傾・後傾は日常生活の偏った筋肉の使い方が原因です。仕事をすれば専門性が増します。すると座る時間が長くなったり、立っている時間が長くなったりと個人によって使う筋肉に差が出てきます。骨盤には多くの筋肉が付いるため、それによって骨盤が前傾・後傾します。(※何度も言いますが、骨盤は歪みません。)

骨盤に付く筋肉で骨盤の傾きに関係するのは、臀部や大腿部に付く筋肉や腹筋、腰部の筋肉です。勘が鋭い人は気が付きますが、要は硬くなった筋肉を緩め、衰えた筋肉をトレーニングすれば骨盤の傾斜は自然な状態になります。もちろん、仕事を変えるわけにもいきませんから、こうしたことは続ける必要があります。逆を言えば、指導さえ受ければ自分でもできるのです。

ただし、ここで注意しなければならないのが、「痺れや痛みがあるなら自己判断しない」ということです。自分で「腰が痛いのは原因は骨盤だ!」といって無理な運動を続けた結果、症状を悪化させて来る方もたくさんいます。

骨盤の左右の傾斜

骨盤の左右の傾斜

上のイラストをご覧ください。先ほどの骨盤の前傾・後傾のように、今度は左右に傾いているパターンです。

ちなみに骨盤矯正ではよく、お客様をベッドに寝かせて脚を揃え、「脚の左右の長さが違いますね」と言いますが、これは上のイラストのように骨盤が少し傾斜しているだけで、骨盤から足の長さはメジャーで測るとほとんど差はありません。視覚のトリックですね!

こちらも先ほどと原因は同じです。日常生活の偏った筋肉の使い方が原因です。
X脚やO脚など、“スタイル”を意識するのであればある程度のストレッチやトレーニングは必要かと思いますが、人間は左右非対称ですので、多少の左右差はこの場合特に問題としなくても良いと思います。

歩行の異常や痛みを伴う場合は、中殿筋の麻痺や股関節の疾患、側弯症など多くの疾患が考えられますので、こちらも自己判断は禁物です。

骨盤矯正の問題点

バツ 女性

「骨盤ブーム」や「骨盤ビジネス」は多くの社会的な問題を孕んでいると思います。

まず、整体師やカイロプラクティックは民間資格であり、事実上誰でもすぐ出来てしまいます。また、骨盤矯正を「治療」と言って施術をするところも多いですが、そもそも治療や診断ができるのは医師のみです。姿勢が異常に変化し、痛みや痺れを伴う場合、必ず整形外科で診断・治療を受けてください。

最近では接骨院で勤務している柔道整復師(国家資格者)が自費で骨盤矯正をしているところも多いです。確かに、自費であれば接骨一般の業務と別室で行うのは可能ですが、実際の柔道整復師の業務範囲ではありません。接骨院や柔道整復師については過去の記事をご覧ください。
・参考:接骨院ってどんなところ?どんなことができるの?【現役柔道整復師が解説!】

お客様や患者様には、きちんとした状態の説明が必要不可欠になります。「その症状は骨盤の歪みが原因なので、矯正しましょう。」では、ここまで読んでくだされば不信感を抱かれると思います。

正しく説明を受けるなら、「骨盤は歪みませんし、手で骨盤の形を整える“矯正”はできません。不良姿勢や筋肉の偏りで骨盤が傾斜をすることはありますが、人間はもともと非対称な生き物なので、ある程度は許容範囲です。ただ、骨盤の傾きは不良姿勢を招き、関節を痛めやすい状態にするので、痛みや痺れ等が無ければ、日ごろからケアするのが望ましいと思います。こちらでも手技で骨盤の傾斜を整えることはできますが、それは一時的なものです。継続しなければ次第に元に戻りますので、継続したストレッチやトレーニングが必要です。日ごろのセルフケアも大事ですし、それらについてもアドバイスいたします。一度の手技で永久的に骨盤の傾斜を整えることはできませんので、継続してご来店ください。ただし、内臓の不調や関節の痛み、痺れなどがある際には、きちんと医師の診断を受けてください。」といったところでしょうか。

骨盤の傾斜自体は痛みや痺れなどの症状を伴わないような場合には、生理的なものであり、特に問題ではありません。そのため、治療ではないので保険証ももちろん使えません。一度では効果が出るはずもなく、高額な回数券を買わされて消費者ホットラインに連絡をする方も多いです。

特に注意していただきたいのが、妊娠・出産における骨盤の状態です。妊娠・出産時はホルモンの影響で骨盤の結合が緩みますが、産後は自然と元に戻ります。ですが、この際に無理に関節部を動かすと、骨盤の緩みが戻らず、仙腸関節部の痛みに長く苦しむことになります。実際当院にも産後すぐに動きすぎた結果、骨盤部の痛みを訴え来院した方がいます。その方は仙骨がパコパコ動いているため医師に紹介状を書きましたが、「一生治る見込みがない」という診断を受けました・・・。

まとめ

ポイント

最後にまとめると、

➀骨盤は歪まないしズレない
➁人間は左右非対称が当たり前
③痛みや痺れがあるときは、医療機関を受診
④診断・治療は医師にしかできない
⑤骨盤矯正は骨盤の傾きを見ている
⑥骨盤の傾きを作るのは筋肉
⑦骨盤の傾きが姿勢や関節の負担に関係するのは事実
⑧日ごろのケアとしてとらえる


骨盤矯正を行う店舗は玉石乱交状態で、利用する方もどうすればよいのかわからない状態です。確実に言えることは、身体に不調がある方は医療機関を受診し、不調が無い方はボディラインや健康の保持・増進として整体院やサロンに行くのが良いかと思います。

当院でも骨盤の傾きについてアドバイスをすることがあります。
例えば、Aさんが重い荷物をもって腰を捻って痛めてしまいました。骨盤を作る仙骨は背骨の一部で、その上には腰椎が続くので、腰の関節部の負担と骨盤の傾斜は関係しています。Aさんの状態を把握して施術をする際には、骨盤周囲に付く筋肉も視野に入れます。実際には腰の痛みがすぐに取れても、元の日常生活で再度痛める不安がある際には、自宅でできるケアの方法についてアドバイスいたします。正直なところ、毎日継続してケアすることが大切で、1回1回高額な費用を払う必要はないと思うのです。何度も言いますが、どんなに高額でも1回で永久的に体に変化を出すことは不可能です。でしたら質の高い、自宅でできる方法のアドバイスを受けた方が効果的だと思います。

最後に

患者を励ます理学療法士

いかがでしたでしょうか?

ここまで読んでいただければ、骨盤矯正ビジネスの問題点がわかるかと思います。結論は「姿勢を良くしましょう。そうしないと体に不調が出ます!日ごろからケアしましょうね!」という、昔から言われていることを「骨盤矯正」と名前を変えているだけなのです。そのため、骨盤矯正や歪み、ずれといった言葉に惑わされ、左右非対称が当たり前なのに左右対称にしようとしたりといった誤った認識が定着してしまったのです。

人間の身体は、今の人間と昔の人間でそんなに変わりません。変わったのは“生活”です。姿勢の乱れは矯正や治療するものではなく、“生活”を見直すことが大切なのです。利用する方も、まずは再度自分の生活を見直し、改善できるところはないのか改めて考えてみましょう(^_-)-☆


骨盤矯正とよく引き合いに出されるO脚やX脚、足のアーチの問題については、別な記事で解説しておりますので、下記を参考にしてみてください!

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